81: タイポグラフィについて習った

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Courseraにお金を払い始めた。

常套句のように「また大学/大学院に行きたい」というようなことをぼやいてしまいがちであるのは、もしかすると周りに居た人たちからよくその言葉を聞いていたからかもしれない。嘘ではないにせよそこまでの叶えたいほどの熱意はなく、お金と時間が突然余分に現れたならきっとやるだろうなの域だったからあまり理由を考えなかったが、主成分を取り上げて優先順位を与えてみると

  • 興味のある分野の特定の内容を学びたい
  • 興味のある分野についてよく考えられたカリキュラムの上で体系立てて学びたい
  • 特定の誰かの講義を受けたい
  • 異なる分野での新たな学位が欲しい
  • 大学に通う体験をやりたい気がする
  • 工学系での修士以上の学位が欲しい

といった具合になる。あまり学歴を補強したい意図がないことを考えると、一般的な応募による受験をして入学をして何年か通いますというのは時間や費用に見合わない。ただ、学びたいと思っている割には学ぼうとしないから「入学」的な強制力が欲しいことと、学位の学歴的な側面よりもこういう属性ですラベルが追加的にあった方が面白いのでCertificationが欲しいというのを加味したら、妥当にオンラインコースへと落ち着いた。

そうするとCourseraUdemyに行き着くことになるのだけど、サービスの見た目上の好感度と、同僚や知人の多くがCourseraのMachine Learningの講義を受けていて自分もいずれ受けようと考えていたというのでCourseraに決めた。感度の高い知人から年単位で遅れてのCoursera登録である。そもそもこの人気講義はCourseraの共同創業者によるもので、サービスの中でも火を付けるための目玉的存在なのだから良いものに決まっているのだけど、大学院での確率過程やデータマイニングの講義以来敬遠気味だった内容に時代が後押しするまで手を出せずに居た。

Introduction to Typography を受講した

Introduction to Typography - California Institute of the Arts | Coursera

満を持して登録する際には、この講義を受けることに決めていた。カリフォルニア芸術大学グラフィックデザインのコースのひとつ。本来は他にもデザインの講義が一緒になっているのだったが、特にタイポグラフィーに興味があったのでこれだけをEnrollした。仕事上、デザイナーとの会話でLetter Spacing等について話した時に、CSSのプロパティ以上にそれらに付随するデザインのことを知らないなと改めて思ったのが最後の決め手であった。何となくでフォントを選んで何となくでデザインをやって凌いでいたのをもう少し補強したかった。

先週で無事に4週の講義、課題を終えてCertificationを貰ったところで、結果としてこの講義を選んでよかったというのが感想だ。アメリカで働き出す頃からLinkedinを割と見るようになっていて、そこにCertificationを登録出来るような仕組みがあるのは何となく嬉しい。資格マニアみたいな人はこういうのがもっと気持ち良いもんなんだろうか。

ノートや内容をそのまま書くとCourseraの意味がないので、大枠のやったことや感想を書いておきたい。

第1週 Talking Type

講義導入と、触りとしてFontとTypefaceの違い、Typeの構成要素や部位の名前、単位。San Serifがヒゲなしフォントだってふわっとわかってはいたのだけど、ヒゲがSerifでSanがフランス語でwithoutというのをわかっただけで満足感があった。

導入にあたって、InDesignを使うから講義期間はトライアルで十分だから入れておくようにという説明があって、Adobe CCで入れたら講義が公開された当初と違ったのか1週間しかなく支払いをした。実際には3週目と4週目でしか使わないので3週目の着手時にトライアルにすれば無料で乗り切れたかもしれない。

初週なので張り切って、講義内容を全て和訳し、大事な箇所は講義ビデオのスクリーンショットを撮りつつesaにまとめていったが、逐一講師の言っていることを日本語でしっくり来るように訳すことに苦労していて、講義内容は面白いのだが英語の勉強度合いが強まってしまっていた。ただ、日本語で残すと内容が頭に定着しやすいのと、後からでもすっと読み直せる。

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課題は講義内容についてのクイズのみ。

第2週 Typefaceとその歴史

最高だった。これこれこういうのというくらいこのTypefaceはこういう時代背景でこうやって誰が作りましてんって話を延々と聞けた。こういう形で一度触れておくと後はインターネットで自分で学べるので内容の詳しさに依らずきっかけや大枠を得られること自体がおいしい。うおー、Helveticaなるほどーという気持ち。

楽しかったので1週目に続き全力で和訳ノートになった。

課題は与えられたいくつかのTypeface名の中からひとつを選んで、歴史背景やTypeface自体の特徴についてまとめるもの。元々好きだったDINを選んだが、この後もこの選択が付きまとうので好きなものを選んで良かった。この週から課題は全て他の受講者にレビューされ、採点されるし、自分も3人以上採点する必要があった。

第3週 Typeを使った作業

Typefaceだけへの注目から、ドキュメント全体に視点を引いて、単位や概念、作法について学ぶ。word wrapping周りの話は特に聞けて良かった。 レイアウトの話は、ちょっとデザイン苦手問題をどうにかしてくれた本であるノンデザイナーズ・デザインブックで読んだ点が多く、基本的な点であることを特に確認出来た。

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]

課題は第2週のまとめたDINについてのレポートをレターサイズのドキュメントでいい感じに配置したり、Typeface自体のパラメータをいじって表現をするもの。締め切り寸前での作業となってしまい、PDFでエクスポートした後の成果物を確認せずに出したら改行周りがぐちゃぐちゃになってしまっており、無為にスコアが下がってしまい翌週になって気づいて後悔したい。

時間を作れなかったこともあるのと、全和訳の作業に限界を感じて、学校でのノートの取り方と似た形で、聞いた時の要点を英語でそのまま書き落としていく形に。時間は一気に節約出来たが、ノートの読み直し時のコストが高い面があるのが悩ましい。

第4週 意味のあるTypeをつくる

ドキュメントのレベルから更に引いて、ポスターや芸術作品になったときにTypeがどういう目に遭うかという話。Type自体のベクターをいじくり回す時にどういうことをやれるか触れたところが好きで、最近一緒のプロダクトに携わったデザイナーがロゴを作る過程を見せてくれた時のあれこれと繋がった感じがした。

実はノートを取らなくても、その場で理解すれば課題は乗り切れるということに気づき、講義ビデオを何周か聞いて課題の内容だけ和訳した。もちろんそれで十分なのだけど、後になってこの週で話されていた内容について雰囲気程度しか思い出せなくて困ったので結局見直してノートを書く流れに。

課題はDINを表現するTypographic Posterをこれまでの課題で作ったものを用いつつ作るというもので、表現の側面が一気に強くなったので他の受講者の評価をするのが楽しかった。自分の成果物が褒められるのもちょっと嬉しい。

もうちょい続けそう

英語の講義とどう向き合うかが問題で、どうしても普通に講義を受けるよりも時間を要してしまう部分が多い。英語で理解して英語でノートを取り英語で振り返るにはまだまだ遠い。英語も学べるので一石二鳥ではと思えないこともないが、講義の内容がもう少し集中したいのが正直なところ。ボランティアの力なのかMachine Learningの講義に日本語字幕がついたので比較するのに次の数ヶ月はこれに割いても良いかもしれない。

砕け散るところを見せてあげる

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

序盤は眺めるように空き時間で小分けに読んでいたら、途中から引き込まれるような感覚で空き時間を探しては読み、中盤以降は最後まで勢い良く読み切らされた。ライトノベルの空気を感じさせる人物間のテンポの良いやり取りが多い反面、高校でのいじめの描写が濃いめで落ち着かない気持ちのまま読み進めていた。

あれ、これミステリとかサスペンスだっけと途中から少し予想の出来てきた結末は、購入時に期待した竹宮ゆゆこ作品のイメージとは全く違った。しっかりとミスリードをさせられ最後はとても混乱し、要所要所を読み直すことになった。叙述トリックがあるなんて思わず、丸腰というかRPGでフィールドの隅々を調べるような注意を払えなかったのが悔しい。ちょっと竹宮ゆゆこの他のも読んでみようと思う。

「瑠璃も玻璃も照らせば光る」ということわざを初めて知った。

Final - ウェブ決済に用いるクレジットカード番号を逐次生成出来るサービス

Finalは利用先限定、ワンタイム利用を前提としたクレジットカードを逐次発行してくれるクレジットカードサービス。2016年で最も自分の生活に入り込んできたサービスといえる。

Welcome to Final.

サービス登録が即ちクレジットカードの発行で、登録時に信用調査や限度額の決定などの普通のクレジットカードと同様のプロセスを経て、自宅にカードが郵送されてくる。ウェブサービス自体はそのウェブ明細。iOS/Android向けのネイティブアプリもある。

それに加えて、サービス上で随時カード番号を発行出来る。ワンクリックで、カード番号、有効期限、セキュリティーコードが吐き出され、その場でECサイトでの購入やウェブサービスの利用料の支払いに用いることが出来る。既に40枚を越えるカードを発行し10枚ほどは無効化している。

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発行時に「決済先を限定」するか、「ワンタイムのみの利用」とするかを選択させられるのがFinalの肝で、カード情報の再利用(転用)や意図しない決済処理が行われるリスクがかなり抑えられる。特に従来のカード情報というのは物理的に発行されたものひとつを指すことになり、紛失、盗難、スキミングにより再発行を余儀なくされた際に、ウェブで登録している全てのカード情報等を更新し直すという悲惨な場面に直面することになる。最近Finalのおかげで見事に再発行地獄を免れた。

なお、当初発行された物理カードはお店などの対面決済でのみ使うことを想定されており、こちらも対面をひとつの括りとして尻尾切りが出来る。サービスにログインしてカードを止めたり再発行を依頼したりが数クリックで行える。

Apple Pay, Android Payにおいても端末に結びつけたタイミングで実際のカード番号とは違う有効な番号が内部的に発行されているところからも、別番号発行はセキュリティの面で良いアプローチのひとつといえるのかもしれない。

クレジットカードの利用においては利用金額に応じたRewardsにあたるものを気にする側面があるが、Finalはこれを一律利用金額の1%還元として、こういう特典で本質から目を逸らす気はないのでここに力を入れる気はないと掲げている。1%という数字は悪くないが、ステータスの良いカードに目をやると2, 3%やその他ボーナスなどがあることも少なくないので、利点であるセキュリティ上の問題解決とどちらを取るかというところ。

個人的にはFinalを加えた運用がこの半年で板についてきて、

という状況。

現在は新規登録について万単位での順番待ちのようだが、コンセプトのみの情報と共に事前登録が始まった頃(メールを辿ったら2014年の10月だった)に興奮して待った甲斐があった。(アメリカでまともにクレジットカードが作れる状況で)使い込みそうな人に出会えたら順番待ちをすっ飛ばしで登録出来るリファラルコードを贈りたい。数万人がコンスタントに使うとさすがのカード番号も枯渇するのではとあまり一般的にはならない感もする。

カードのイシューイング周りの業務を提携して頼んでいる銀行の名前が、First BankでそれをFinalという名前の会社が取り扱っている図にはじわじわくるものがある。

追記

まさに、デビット/プリペイドであれば同様のサービスが既に日本国内にもある。

僕もライフカードのVプリカは(元々検証用に登録したのだけど)少し活用していたことがあったけど、少なくともサービスの触り心地は良いものとはお世辞にも言えなかった(さあ、楽天含めて果たしてカード発行までに何回クリックが必要でしょう)し、Finalの動画、サービス、スマホアプリ、ログインを除いて2クリックでカードが発行されるインタフェースを触った時のような興奮はなかった。「それ日本でもあるじゃん」と言ってしまっている反面、5年くらい遅れて「これからはFinTechやで」ってなっているのが不思議だなあ。